不動産とオールディーズ、海外鉄道情報局

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グリン・ジョンズがプロデュースした幻の「Get Back」②

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原点に戻りオーバーダビングなし

ビートルズのレコードを通常プロデュースしたのはジョージ・マーティンだったが、例外的にグリン・ジョンズが制作を担当したアルバム「Get Back」は1969年5月に完成。

ポールの当初のコンセプト通り「原点に戻ろう」という趣旨で、オーバー・ダビングは一切なしという、ロックっぽい音作りで(ただし例外は「Let It Be」で、69年1月の音源に対して4月になり、リードギターが加えられている)、「Dig It」のロングバージョンなど、生のままの4人+ビリー・プレストンの演奏が楽しめる。

しかしグループ4人のOKが得られずに、同時制作のドキュメンタリー映画の制作遅延もあってお蔵入りになってしまう。ちなみにその時点でのタイトルは「Get Back with Don't Let Me Down and 9 other songs」であった。もちろんこれはジャケットの写真同様、ファーストアルバムの際の、「Please Please Me with Love Me Do and 12 other songs」にちなんでいる。

映画「Let It Be」に合わせた改訂版

その後、映画の進捗に合わせて再度制作された改訂版が、2枚目に収録された、1970年のファイナル・ミックスだ。

収録曲は映画に未使用の「Teddy Boy」が外され、代わりにA面ラストに「Let It Be」。そしてB面ラストの「Get Back (Reprise)」の前に、「I Me Mine」と「Across The Universe」が挿入された。

このI Me Mineの収録は1970年1月3日で、グループとして最後のレコーディングとなったが、ジョンはセッションに不参加となっている。映画ではジョンとヨーコがワルツを踊るシーンで使われたが、当時は正式なレコーディングは行われておらず、このたびの追加レコーディングとなった。

それにも関わらず、再びリリースは見送られ、音源はフィル・スペクターに委ねられて1970年5月8日、グループ13枚目のオリジナル・アルバムとして発売されたのはご存じの通り。

ストリングスや女性コーラスが大々的にフィーチャーされて甘すぎるように思われる公式アルバム「Let It Be」、そして「Naked」を謳いつつテイクの切り張りなど編集作業が随所に施された「Let It Be...Naked」に比べ、もっとも「原点回帰」が鮮明な「Get Back」は、手がけたグリン・ジョンズとともに、もっともっと評価されてほしいものだ(難しいとは思うが)。

Across The Universeの聴き比べ

 

このファイナル・ミックスの音源で聴ける「Across The Universe」は、①フィル・スペクター制作の公式テイク、②ジョージ・マーティン制作の通称「バード・ヴァージョン」(「パスト・マスターズ Vol.2」に収録)、そして③「Let It Be ...Naked」収録と同じく、テイク8が使用された。

しかし①、②と異なりテープスピードはそのままなので、ピッチはオリジナルで、オーバーダビングは女性コーラスのみ。③と並んで、最も生の質感が楽しめる好テイクとなっている。上記4通りのバージョンに加え、アンソロジー収録バージョンを含めると、5通りのアレンジが楽しめるこの名曲、プロデューサーによる味付けの差異が比較できる聴き比べをぜひ楽しみたい。