グリン・ジョンズがプロデュースした幻の「Get Back」①
西新宿BFで税込み1000円!!
ビートルズやローリング・ストーンズ、エリック・クラプトンなどの音源が目白押しの西新宿の専門店。なかでもお気に入りなのがBF。おそらくBFのオリジナルレーベルと思われる「MOONCHILD RECORDS」のシリーズで棚に平積みされていたのが、ビートルズの幻のアルバムとして知られる「Get Back」だ。ビーチ・ボーイズの「スマイル」と並んで、ロック史上2大「幻のアルバム」として君臨しているのはみなさまご存じの通りでしょう。
発売を前提としてグリン・ジョンズがプロデュースを担当し、約1年の期間をおいて2回のミックスが制作されたこの音源、プロモーション用のアセテート盤が流出したことから、従来よりコレクターの間では有名であったが、未入手だったところ、ちょうど1000円(なんと税込み!!)で購入できるとあって、鋭意、購入。足取りも軽く帰途についたのでした。
粗削りな構成が魅力。ロックを感じる音作り
このMOONCHILD RECORDS版「Get Back」は、ジャケットはデビューアルバム「Please Please me」のパロディの、ご存じEMIビルで撮られたカットが使われているが(青盤でもおなじみ、それにしても、わずか6年後とは思えない変わりよう…)、手書きで校正文字が書き入れられた、いかにも幻のアルバム風のデザインが秀逸だ。構成は2枚組で、1枚目にはファーストミックス、2枚目にはセカンドミックスがそれぞれ納められ、容易に聴き比べが楽しめる。といっても収録曲はほとんど重なっており、ミックスも共通の楽曲がほとんではあるが。
以下、Disk1(ファーストミックス)の収録曲です。
Track1 One After 909
Track2 Rocker
Track3 Save The Last Dance For Me
Track4 Don't Let Me Down
Track5 Dig A Pony
Track6 I've Got A Feeling
Track7 Get Back
(以上、Side A)
Track8 For You Blue
Track9 Teddy Boy
Track10 Two Of Us
Track11 Maggie Mae
Track12 Dig It
Track13 Let It Be
Track14 The Long And Winding Road
Track15 Get Back (Reprise)
(以上、Side B)
魅力はなんといっても粗削りのゴツゴツした感じと、ロック感覚あふれる音作り。これを繰り返し聴いていると、フィル・スペクターによる公式盤は、甘すぎて聴く気になれなくなるというのが正直なところ。冒頭から強引に切り込んでくるロックンロールの「ワン・アフター 909」、わずか30秒程度のセッション風景ながらザクザックっと絶妙のタイミングのギターのカッティングに心奪われる「ロッカー」、そしてジョンとポールのぶっきらぼうなようで溶け合うようなコーラスワークが絶品で、このまま永遠に聴いていたい気持ちにさせる「ラストダンスは私に」の、冒頭3曲の流れが実に痛快だ!!
B面最後の「ゲット・バック(リプライズ)」もラフな演奏で、ノリのよいポールのボーカルが楽しい。しかしこの構成にするなら、A面ラストの「ゲット・バック」は、A面トップのほうがよかったのでは? またB面トップの「フォー・ユー・ブルー」で、イントロをわざわざやり直すのは、さすがにジョージに悪いのではないだろうか…。
また「テディ・ボーイ」はポールの初ソロ・アルバム「マッカートニー」収録のバラード。この曲のみ、セカンド・ミックスでカットされた。映画「レット・イット・ビー」で使われなかったからだが(サントラ盤としての発売が予定されたため)、ポールが自身のアルバム用に温存したからという説も。真相はいかに…?
丁寧な歌い方と、(リンダの?)美しいコーラスのソロ・アルバムのほうが好感が持てるが、こちらはジョンのナンセンスな掛け合いが楽しめる。「ワン・アフター909」もそうだが、このふたり、こんな険悪期でもいったん歌いだすと、このノリ、そして説得力。まさにロック界史上、最高最強のツインボーカルだ!!